Jan
27th
Fri
27th
限りなき絶望の闇が時々予の眼を暗くした。死のうという考えだけはなるべく寄せ付けぬようにした。ある晩、どうすればいいのか、急に眼の前が真っ暗になった。社に出たところで仕様がなく、社を休んでいたところでどうもならぬ。予は金田一君から借りて来てる剃刀で胸に傷をつけ、それを口実に社を一ヶ月も休んで、そして自分の一切をよく考えようと思った。そして左の乳の下を斬ろうと思ったが、痛くて斬れぬ。微かな傷が二つか三つ付いた。金田一君は驚いて剃刀を取り上げ、無理矢理に予を引っ張って、インバネスを質に入れ、例の天ぷら屋に行った。飲んだ。笑った。そして十二時ごろに帰って来たが、頭は重かった。明りを消しさえすれば目の前に恐ろしいものがいるような気がした。
— 石川啄木 啄木日記 ローマ字日記 (via to)